先天奇形である二分脊椎患者に発症する褥瘡は一般には知られていません.二分脊椎は,10000人に3人発症し、成人までに85%以上が足に褥瘡を経験するという統計があり,類推すると30000人以上の二分脊椎患者が足の褥瘡を経験済みです.歩行可能な二分脊椎患者でも80%以上が足の変形を有し、運動神経麻痺よりも知覚神経麻痺が高位にありますので,多くは足部の知覚を有していません.自覚がない傾向が強く,潰瘍があっても病院にかからない方が多いと推察します.加えて,若年者が多く活動性が高いため,創の悪化や感染が早く進みます.私は,このような足部潰瘍を「歩く褥瘡」と呼んでいます.一方、歩行不可能な二分脊椎患者では、坐骨部にも褥瘡を生じます。多くは骨の褥瘡のため坐骨そのものの変形があり難治性です。手術をして一旦治癒しても再発率が脊髄損傷患者に比べ高い傾向にあります。私は多くの二分脊椎患者の褥瘡を診ています。まず、その特徴からお話し「二分脊椎の褥瘡」を識ることから始めたいと思います。